2020年は、派遣会社にとって、遵守すべきことが増える年

2020年、新型ウイルス対策に追われる中、4月1日から全国の大企業で一斉に施行された「同一労働同一賃金(別名:パートタイム・有期雇用労働法)」の遵守に向かった派遣会社も多かったのではないでしょうか。 中小企業は1年後の2021年4月から適用されるため、しばらくの猶予はありますが、様々な整備を始められたことでしょう。

そんな中、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」の公布も行われました。法務のご担当者は、周知のことと思います。派遣会社の社員の皆さんは、この情報について、どれくらい関心がもたれているでしょうか。

これは、2020年3月10日、第201回通常国会に提出された「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」は、6月5日の国会において可決、成立し、同年6月12日に公布されるという経緯でした。

改正法の施行は一部を除き、公布後2年以内とされているため、こちらの対応も急がなければなりません。

本改正においては、利用目的規制を緩和した「仮名加工情報」を新設するなど、個人情報の利活用を促進するための変更が加えられた一方で、後述する「個人関連情報」の第三者提供に関する規律が新設され、記録開示義務やペナルティも強化されるなど、アメとムチのメリハリをさらに効かせる改正となりました。

特にSaaS・ウェブサービスにおける適正な個人情報利用という観点から、プライバシーポリシーとその同意取得に関しては、事業者として見直さなければならない派遣会社も多いことでしょう。

派遣会社は、トライアングルの関係で成り立ちます。

派遣元と言われる派遣会社、派遣社員を受け入れる派遣先企業、契約して働く派遣社員の三角形の中で、契約する派遣社員のマイナンバーはじめ、派遣先企業との間の機密情報保持の契約など預かる情報は多岐にわたります。これらの情報を、うっかり流出させることがないよう、派遣会社は様々な対策を立てた上で、慎重かつ丁寧に扱うことを求められます。それでも万が一がある・・・ということも想定しておかなければならないのは、現場の人員のストレスになりかねません。

個人情報保護法への対策は進んでいますか
個人情報保護法への対策は進んでいますか

人の意識を変えたいなら、環境を変えましょう

性善説がいいのか、性悪説に基づく方が良いのか迷うこともあると思いますが、わたしたちは人間である以上、思いもしない行動を起こすことがあるものです。

電子メールという手段で、派遣先企業に伝えたいことがあるときは、文章内に個人にまつわる情報が含まれている場合は、ダブルチェックするなど、あえて、人の手を増やして、工数を増やして慎重に行うことが求められます。

急いでメールを発信したら、違うお客様に送信してしまった・・・

送信取り消しは、ある一定の時間内であれば行うことができるメーラーもありますが、気づくのが遅れれば、対処できません。

工数を増やすのは、コスト増大になるので、限度があります。これまでよりも、情報の扱い方を慎重かつ丁寧に行うためには、人の意識を変えなければなりません。その意識を変えるためには、環境を変える、環境を整えることが求められるというわけです。

日本は、「人」に期待を寄せて、仕事の多くを進める傾向が強くみられますが、人を変えるのであれば、まずは、「環境整備」が必要です。 ハードディスクの交換、USBメモリの持ち出し、コロナ禍においては、会社支給のパーソナルコンピューターの持ち出しのルールなど、急いで環境整備を行った中小の派遣会社も多かったと思いますが、2年後の施行までの間に整備しなければならないことが、またひとつ、増えたわけです。派遣会社で働くすべての人が、安心して仕事ができるよう、プライバシーポリシーの変更だけでなく、それを運用する「しくみ」をどう整えたらよいか。もちろん、運用側の人材を育てることや、年に数度、社内で研修ができるトレーナーを育成しておくことも必須です。さっそく対策を考えてくださいね。

プロフィール

竹内和美先生

竹内 和美

実践を想定したワークショップ形式での研修を実施。研修中に、その企業の課題を参加者に認識させ、解決、前進に意識を一丸とさせる投げかけで、想定以上の効果があると好評。製造業から小売業、サービス業まで、また経営者や中間管理層から新入社員まで、実績と事例が豊富。組織の根幹である人材育成に様々な角度からアプローチしています。